ニューヨーク恋物語
第4章 横浜編

ディナーが終わって酔いを醒ました二人は
今日子のマンションに向かった。
今日子のマンションはランドマークの向かい側にあり
夜になると横浜の夜景がきれいに見えた。

大沢は今日子の部屋に入ると懐かしさがこみ上げて来た。
何度この部屋で愛を確かめ合ったことか。
大沢はそんな昔のことを思い出していた。
テーブルの上の小さな花瓶に花が生けられ
大沢を歓迎する今日子の気持ちを表していた。

今日子はすぐにバスを用意してくれた。
バスタブには並々とお湯が張られ、大沢の疲労を和らげてくれた。
ニューヨークを発って20時間以上の時間が流れていた。
大沢はやっとこの場所に戻って来たことを実感した。

バスから上がると、大沢のバスローブが用意されていた。
今日子のさりげない気配りを
大沢はこれまでにも嬉しいと感じて来た。

リビングに戻るとテーブルにはブランデーが用意され
今日子はキッチンにいた。
僅かな食材で今日子はいつも美味しいものを作ってくれた。
今日子の手はまるでマジックハンドのように料理が上手かった。

仕事では素晴らしいキャリアを持ちながら
一方では家庭的な今日子に
多分大沢は一番魅かれたような気がする。

今日子の安らぎはいつも大沢を少年のようにさせてくれた。

今日子は大沢のグラスにブランデーを注いだ。
二人はもう一度乾杯をした。
少し飲みながら話をすると大沢は酔いが回って来た。

そんな大沢を残して、今日子はバスへと席を立った。
衣服を脱ぐと今日子の裸体が現れた。
今日子は自分の裸体を鏡に映した。
今、この体が大沢を受け入れようとしていた。
シャワーを浴びると
今日子は自分の体がキリキリと火照っていくのを感じた。

バスから上がった今日子は髪を梳かしてコロンを付けた。
そして大沢の横たわるベットに向かった。
大沢の名前を呼ぶと返事がなかった。

「眠ってしまったの? きっと疲れたのね」

今日子はそう言うと大沢の眠っているベットに入った。
大沢は目を覚ました。

「タヌキ寝入りだったの?」

「タヌキ? 今夜の僕はオオカミのつもりだが・・・」

そう言うと大沢は今日子の体に触れて来た。
大沢の愛撫はいつもゆっくりと優しかった。
その優しさが次第に
今日子の体を瑞々しい女の体に変えていった。

喜びと哀しみが隣り合わせであるように
今日子は大沢と結ばれる時
なぜか愛しさと切なさが交差する。
この切なさは何なのかと危惧することがある。
きっとそれが二人の運命なのかもしれないと思うことがある。

大沢の唇は今日子の唇を求め、首筋からうなじ
そして小さいけれど形のいい乳房でとまり
まるで赤ん坊が母を求めるかのように今日子を求めてきた

照明を落としても、今夜は窓からの月明かりで
大沢は今日子の裸体がはっきりと確認できた。
何度この瞬間を想って暮らして来ただろう。
どうにもならない距離にいつも苛立ちを覚え
それでもお互い愛さずにはいられなかった。

今日子の体はまるで花びらが開くかのように・・・
二人は甘い時間へとゆっくりゆっくり堕ちていった。

第5章へ
BGM (Thank You)