霜月・3
        観覧車

今夜 彼はこの場所に彼女を誘った
この観覧車の中で愛を告白して
持ってきたリングを渡そうと思っている

長い間 温めてきた想いを伝えるために
この場所を選んだ

「 I love you 」

1秒でも伝えられそうな気持ち
けれど彼の想いは何億光年かかっても
伝えきれないほど彼女を愛していた

1周は15分
リングをはめて 頂上でキスをして
戻るまでの15分はとても短い
けれど彼には精いっぱいの15分

今夜二人はこの観覧車から
未来へと出発(スタート)する


                 (11月21日)
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        愛の15分

青い空に交差して ゴンドラに揺られて
二人で夢風船のような旅をしよう

まわれ まわれ 大きくまわれ
地上からゆっくりと遠ざかり
二人は夢の世界への扉を開けた

小さくなっていく建物
港の船はまるで笹舟のようだった
そして下界には空と同じ色の海が広がった

たった15分の夢風船
けれどあの時
私たちは確かな手ごたえの中にいた
(11月22日)
       一日の終わりに

一日が終わる時
あなたは何を思い今日という日を閉じますか?

やり遂げた仕事への達成感?
叶わぬ想いへの絶望感?
ささやかな喜びへの満足感?
持続できないことへの焦燥感?

人間だから 完璧ではない
完璧でないから 人間なのだ
新しい明日がすぐそこで待っている

一日の終わりに
たとえそれがどんな一日であっても
私は生かされたことへの感謝を忘れずに
今日というページを閉じたいと思う
(11月23日)
       24時の重み

時計の針が24時をさした時
人はその時を 「 今日 」 と呼ぶ
生まれたての今日はとても不思議な60秒である

新年のカウントダウン
私たちはその瞬間をともに喜び祝う

シンデレラの魔法がとける
昨夜の舞踏会のヒロインが灰かぶりの娘に戻る

新しい今日が始まった瞬間だ

24時はいつも私たちにとって
重みのある特別な時間のような気がしてならない
(11月24日)
       動き出す地球

眠りから覚めて 朝がゆっくりと動き始めた

新聞配達の自転車のブレーキ音
それぞれの家庭でコトコトと響く
ブレックファーストの準備音
心地よい朝の音色だ

やがて電車が動き始め 車が走り始め
通勤・通学する人の群れが駅へと向かう
息づかいが感じられる目覚めの時間だ

街はゆっくりと動き始めた
地球の脈拍が聞こえる
さあ! 今日もがんばって精いっぱい生きよう
(11月25日)
        赤煉瓦倉庫

明治から大正へ・・・
発展する港のシンボルとして親しまれてきた
赤煉瓦倉庫
街の繁栄と歴史を刻み込んだ勇姿は
今も変わらずここに佇んでいる

21世紀
重く閉ざされた扉が再び開かれて
未来へとよみがえった

真実は悠久の時を越えて なおも変わりなく
受け継がれていくのだろうか

そして今・・・
灯りの下で恋人達は何を語り合うのだろう
(11月26日)
       あなたの選ぶ色

たくさんのあめ玉の中から
あなたが選ぶ色は何色ですか?

オレンジ色・・  恋をしているの?
水色・・  今日は少し悲しいの?
緑色・・  心のオアシス求めてる?
黄色・・  今日も元気いっぱいなのね?
白色・・  あなたの好きな色に私を染めて?

さあ!あなたが選ぶ色は何色ですか?

「 ぜ〜んぶ 一緒にお口に入れてはダメ? 」

そうね、全部一緒に入れてしまったら
コンピュータがおかしくなってしまうかも!

でもね、もしかしたらそこから新しいあなたが
生まれるかもしれないね
(11月27日)
    あなたを見つける赤い糸

「もー いいかい?」  「まーだだよ」
「もー いいかい?」  「もーいいよ」

鬼ごっこをしてあなたに捕まった私は
今度はかくれんぼの鬼になった

秋色のセーターを着たあなたが
秋の中に隠れた時
見つけるのはとても難しい

でも 大丈夫!
あなたの心と私の心を結ぶ赤い糸を
たどっていけばいいはなし

たまには現実から逃避して
森の中でかくれんぼや鬼ごっこなどして
遊んでみたい
(11月28日)
       銀杏

落葉した銀杏の葉を一枚拾って
あなたは私に言った。

「この秋の思い出に 僕から君に」

あれから時が流れて
銀杏は何度も色づいては落葉した

そして風に吹かれて私の足下に舞いこんだ
けれどあの時の銀杏の葉を
二度と見つけることは出来ない

人生もまた ・・・
決して今日と同じ明日に出会うことはない
(11月29日)
      思い出に鍵をかけて

今年の秋・・・
あなたはどんな思い出色に染まりましたか?

小学3年生・・・
出来なかった逆上がりが
やっと出来たのも 秋の日の午後

中学1年生・・・
初めて初潮をみたのも 秋の日の夕暮れ

高校2年生・・・
片思いの先輩にコスモスの花を
渡したのも 秋の青い空の下

23歳・・・
突然のプロポーズは 秋の日の黄昏どき

秋はいつもドキドキするドラマを私に届けてくれた
Good-by November   Good-by Autumn

今年も思い出にしっかり鍵をかけてしまっておこう
(11月30日)