March . 3
BGM そばにいて
(3月21日)
        彼岸おはぎ


母さん・・・ 今日はおはぎを持って来たよ
粒あん きな粉 青のり 黒胡麻 桜もち
母さんはどれにする?

母さんは粒あんのおはぎだね
私はきな粉のおはぎが好きだよ

私 母さんのように上手く作れないから
今日は買ってきたよ
父さんの写真にもお供えして来たから安心して

さあ・・・ この病室(へや)で食べよう
美味しいお茶が入ったよ
母さん・・・ 私が食べさせてあげるから

和歌山県・有田 2006年4月撮影 ムスカリ 
                      (3月23日)
和歌山県・有田 2003年4月撮影
         ナズナ  (3月22日)
      ぺんぺん草


野原でおまえに出会うと嬉しくなる
まるで幼なじみに出会ったようだよ

高く高く・・・ 空へかざして回してみる

しゃらしゃらしゃら・・・
しゃらしゃらしゃら・・・

おまえのでんでん太鼓は優しいね
泣き虫 私が泣き止んだ

そうさ・・・
おまえのでんでん太鼓はハート型

私を慰めるためにここにいたのか?
和歌山県・有田 2003年4月撮影  (3月24日)
   有田鉄道(2002年12月31日廃線) 
       旅立ち


手荷物はいらないと言った
想い出はハートに詰め込んだから
あとは何も持たずに旅立つと言った

終着駅では父さんが待っていると
気丈に笑顔で旅立った

「ありがとう 母さん」

あなたの娘でいられたことは私の勲章
今度生まれ変っても
私は母さんの娘でいたい

母さん 約束だよ 指きりげんまん






和歌山県・有田 2006年4月撮影  (3月25日)
   夢なら醒めないで


やっとふるさとに帰って来たね

桜満開の春・・・
この並木道をあなたと歩きたかったんだ

花の里の公園で桜弁当広げて
あなたと二人で食べたかったんだ

たったそれだけのこと
ずっと叶えてやれずにごめんよ

やっとふるさとに帰って来たね
この桜・・・ 夢なら醒めないで

和歌山県・有田 2004年1月撮影  (3月26日)
    朝焼けの詩


どんなに辛い夜を過ごしても
朝はやって来るんだね
眩しいほどの輝きの中で

どんなに哀しい夜を過ごしても
朝になれば涙が乾くんだね
あなたの体温が私に伝わって

ああ・・・
朝焼けの音が聴こえる

陽は沈み 陽はまた昇る
あなたは永遠に私の中にいる

私はご来光(あなた)に合掌する
和歌山県・有田(生家) 2002年6月撮影
                      (3月27日)
      カルピスの想い出


時々遠い昔を想い出す
広子ちゃんと絵里ちゃんと博哉ちゃんが
うちに遊びに来たこと

母さんが桜の木の下に花ござ敷いてくれて
バスケットにはお菓子がいっぱい

母さんの作るカルピスはちょっと濃い目で
氷がとけるとちょうど飲みごろだった

友達が来るといつも優しく笑ってくれて
きれいな母さんは私の自慢だった

母さん・・・ もう一度 桜の木の下で
ちょっと濃い目のカルピスが飲みたいよ
和歌山県・有田 2006年4月撮影  
                 (3月28日)
和歌山県・有田 2006年4月撮影  (3月29日)
    ナナホシテントウムシ


やあ・・・ こんなところにいたのか?
私はおまえを探していたよ

おまえに逢いたくて・・・
どんなにか春を待っていたことか

おまえの背中にある七つのお星さま
その中のふたつを私にくれないか?

大切な人がお星さまになったんだ

夜空の星は涙でかすんで見えないから
手のひらに握りしめていたいんだ
父さんと母さんのお星さまを

和歌山県・有田 2003年4月撮影 母子草
                      (3月30日)
        母子草


線路脇で小さな花を見つけて摘んでった
名も知らぬ私に母さんは教えてくれた

「これは母子草って言うんだよ」

私はこの花をいっぺんに好きになった
母さんと私の花のような気がして

今年も廃線鉄道の線路脇で見つけた
これを押し花にして栞を作るよ
あの時母さんがしてくれたように

母子草・・・ 母子草・・・
それは母さんと私の命が宿った花

2007年3月22日 実母が永眠いたしました
このギャラリーは 有田の写真と共に
母への追悼の気持ちを込めて綴りました
美しい有田の風景をお楽しみください
和歌山県・有田 2003年4月撮影  (3月31日)
           れんげ畑


ふるさとを離れても何度この光景を夢に見たことか
長い間 私の春の代名詞は「れんげ畑」だった
それほどこの場所には想い出がある

父さんと母さんと兄ちゃんと私と・・・・
四人家族がお弁当を広げると楽しくて嬉しくて
私はミツバチのようにれんげの絨毯の上を走り回った

山の向こうから幸せの波が押し寄せてきた
贅沢はできなかったけれど これが幸せというものだと
子供心に はっきりと感じていた



ホトケノザ
カラスノエンドウ
        教育とは


勉強の嫌いな少女だった
教科書を開くといつも眠くなった
そんな私に母は多くのことを教えてくれた

野原でホトケノザに出会うと立ち止まり
茎の周りを円状に巻く葉の姿が
仏像を安置する仏座に似ているから
「ホトケノザ」という名前が付けられたと

あぜ道でカラスノエンドウに出会うと立ち止まり
人が食べるエンドウ カラスノエンドウ 
スズメノエンドウの違いを教えてくれた


      母が最後に私にした教育は
      どんな人も必ず「老いる」ということ
      その老いを自身が受け止めて
      人生を全うしなければいけないということ

      母は自分の身をもって
      私に「人生とは・・・」を教えてくれた
        紫の花たち


ヒソヒソ話が聴こえるよ
君たち こんなにたくさん集まってくれたのか?

母さんの好きな紫の着物を着て
こんな片隅で野辺の送りをしてくれるのか?

母さんはメチャクチャ明るいくせに
メチャクチャ寂しがり屋で賑やかが好きだった

君たちがこんなに集まっているなんて
きっと嬉しくて喜んでいるに違いない

ホラホラ・・・ もっと背伸びして
そして母さんに君たちの姿を見せてやって