ニューヨーク恋物語
第3章 東京編

汐留のレストランに着いたのは19時少し前だった。
今日子が予約したレストランは
一年前大沢が今日子を誘ったレストランだった。
大沢はここで今日子に指輪を渡すことが出来なかった
自分の不甲斐なさを思い出していた。
指輪のことは、今日子は全く知らない。
今でもニューヨークの大沢の机の引き出しに入れたままだ。

ここは銀座やお台場、東京タワーが一望できるスカイレストラン。
あの時と同じように
今日子は窓際のスペシャルシートを予約していた。

この店のシェフは大沢の友人であった。
友人のシェフは大沢と今日子のことをよく知っていた。
彼は今夜二人のためにワインを贈ってくれた。
ソムリエに頼んで、二人に合うワインを選ばせた。

ソムリエが選んだワインは
ミレニアム(2000年)のドイツワインだった。
ミレニアムの年に大沢と今日子は出逢った。
あれから5年の歳月が流れた。
5年間大沢と今日子は真摯な気持ちで愛し合ってきた。

冷たく冷やされたワインがグラスに注がれた。
二人は再会を祝って乾杯した。
上品な貴腐ワインの味に二人は甘味した。
大沢の優しい笑顔を
今日子はまったりとした時の流れの中で見つめた
大沢もまた今日子の可愛らしい仕草に安らぎを覚えた。

二人はお互いの仕事の話をした。
共通の友人の話をした。
そして過去の話をした。
会話は途切れることなく、次から次へと続いていく。
今更ながら気の合う二人だと実感する。
性格も似ている上に価値観も似ていた。
大沢は今日子といると安らいで
今日子も大沢といると自然体になれた。

一生を共にする女はきっと今日子しかいないと大沢は思った。
今日子もまた大沢に自分の人生を託したいと思った。
けれどお互いのことになると言葉を呑み込んでしまう二人。
それはお互いを尊重するあまり無理強いしないでやってきた。

シェフの計らいで
二人の記念日を飾るようなフレンチが運ばれて来た。
二人の時間は甘く優しく過ぎて行った。

少し酔いを醒まして
大沢は横浜の今日子のマンションに行くつもりだ。

滞在する一週間は、八王子の実家には帰らずに
今日子のマンションから会社に行くつもりだ。
今日子もまたそれを望んだ。

ディナーは最後のデザートとコーヒーが運ばれて来た。
今夜もまた二人の新しい思い出が出来た。
ここでゆっくり酔いを醒まして今日子のマンションへ。
大沢はシンプルできれいに片付けられた今日子の部屋が好きだった。
今日子の部屋で音楽を聴きながらお酒を飲むことは
至福の時であった。
大沢は1時間でも長く今日子と一緒にいたかった。

これから横浜で二人の長い夜が始まる。

Photo by Shinshin
第4章へ
BGM (Thank You)